政府が検討する中長期のエネルギー政策を巡り、2050年を原発ゼロの最終目標に設定しようとする動きが出てきた。枝野経済産業相は9日、将来の原発依存度で「2030年に線を引くとは決めていない」と語った。時期に幅を持たせれば、脱原発を打ち出しやすくなるとの狙いが浮かぶ一方で、原発の基本政策について判断を先送りする面も目立つ。
政府は30年までの原発依存度で「ゼロ」「15%」「20~25%」の3つの選択肢をまとめ、どれが望ましいかをパブリックコメントなどで国民に聞いている。 (日経新聞 H24.8.10)
3.11東日本大震災を機に日本の原発政策は大きく舵を切らざるを得なくなった。それほど福島原発事故は日本国民に対して、電力の原発依存に対する意識を変えてしまった。ただ、今見られる脱原発の示威活動には目に余るものがある。今すぐにでも原発を廃炉に向かわせ全てを停止し依存度ゼロにしようとするものだ。代替エネルギーに明確な有効策が見出せない限りは、原発との調整は必要ではないだろうか。
確かに現況では原発の新設は困難だろう。また政府方針の原則40年廃炉を徹底した場合、新設がないと50年には原発がゼロになるわけだ。この場合、30年時点で原発依存度は15%となり、3つの選択肢の落としどころとなるかもしれない。
電力供給には、「安全」「安定」「安価」が求められる。国のエネルギー政策のもと、中長期スパンを以て、代替エネルギーの推進と原発稼働との調整を図っていく必要があると思う。
経済産業省は18日、新潟県・佐渡島の南西沖で来年4月から石油と天然ガスの掘削調査を実施すると発表した。埋蔵の可能性がある面積は約135平方キロで、埋蔵が確認されれば中東の中規模油田並みとなり、国内最大級となる可能性もある。2013年末まで掘削調査を進め、10年後の23年以降の商業化を目指す。 (日経新聞 H24.6.19)
石油資源のなかった英国が、北海油田の開発により1980年代から石油輸出国となり、英国病から脱したことが思い出される。とても夢のある話だと思う。期待せざるを得ない。
東シナ海のガス田採掘権を巡って、中国政府と争いを続けている。また、次世代エネルギー資源とされている『メタンハイドレード』については、日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵量を誇っていると言われている。コストが見合えば、東シナ海や日本海のガス田を含めると、世界有数のエネルギー資源大国になれる可能性があるという意見もあるようだ。
日本もこのことを起爆剤として、英国の時のように、日本病・失われた二十年から一刻も早く脱してほしいものだ。
日本は貿易赤字国になったもようだ。2011年は原子力発電所の事故の影響で燃料輸入が増え、31年ぶりの貿易赤字になったのは確実で、このままでは向こう数年間は赤字から脱却できない可能性が大きい。海外からの利子や配当で赤字を穴埋めできなければ、お金が海外に流出し、国債の消化など国の財政運営も海外頼みになる。日本経済は岐路を迎えている。 (日経新聞 H24.1.9)
経常収支というのは国際収支の一項目で、自国と海外の取引について、製品やサービスなどの取引を計上する収支のことだ。具体的には、(1)自動車・電機や原油などの製品(財貨)の輸出入を計上する貿易収支、(2)観光や留学、輸送などのサービス取引について、国際間の受払いを計上するサービス収支、(3)金融債権・債務の利子・配当金の受払い等を計上する所得収支、(4)国際機関への分担金や贈与・寄付等を計上する経常移転収支、の4つに分類できる。
2011年の貿易収支(輸出額-輸入額)が、1980年以来の赤字になったということであり、歴史的な円高と東日本大震災後の供給不足で輸出が伸びなかった一方、原発停止による代替発電に使う燃料輸入が膨らんだことによる。サービス収支と経常移転収支はもともと赤字で、貿易収支と所得収支で黒字を稼ぎ、全体としての経常収支の黒字を維持してきたわけだが、この構図が変わりつつあることになる。貿易収支の赤字については構造的に定着してしまうとの見方も多く、所得収支の黒字がいつまでそれを埋めることができるのか。エコノミストの推計によると2015年には経常収支の赤字に転落するという。
日本の課題としては、代替エネルギーの推進、過度な円高是正、輸出競争力の強化、観光客の増大、及び海外直接投資の拡大などがある。このままでは対外純資産が縮小してしまうことになる。日本の国家モデルの一体として、経常収支黒字を維持していくことが必要だ。世界最大の対外純債権国が国家破綻した例など無いのだから。
太平洋をとりまく国々が関税のない自由な貿易圏づくりを目指す環太平洋経済連携協定(TPP)。昨年11月に日本やカナダ、メキシコが交渉参加を表明、世界経済の4割を占める巨大な経済連携の実現に向けて動き出した。一方、交渉参加国の利害が鋭く対立すれば、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)のように頓挫する恐れも残る。枠組みづくりに向けて2012年は重要な年になりそうだ。 (日経新聞 H24.1.1)
今年は米大統領選が控えており、協定署名は大統領新任期以降の2013年以降とみられている。発効に至ってはさらに1年は必要とするだろう。TPP交渉の過程で自国に有利なルールを反映させるためにも早期に参加することにより、そうしたルールを政治判断を通して盛り込んでいく必要がある。
日中韓FTAをにらんでの交渉材料とすることも可能だし、将来的な対象国がAPEC(アジア太平洋経済協力会議)参加国である以上、中国・韓国もいずれ参加することになると考えれば、その先駆けと考えても良い。枠組みが決定した後に参加すれば日本にとって得るものは限られるだろうし、かといって参加を見送れば今後成長の著しいアジア市場からはじき出される危険性もある。国益であって政局ではないということを肝に銘じてほしい。
政府・民主党は22日、年内をメドに取りまとめる消費増税を含む社会保障と税の一体改革の素案づくりを進めた。消費税率を引き上げた場合の低所得層対策として現金給付と税額控除を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を明記する方針で一致した。食料品など生活必需品の税率を低くする「軽減税率」の導入は見送る。 (日経新聞 H23.12.23)
政府・民主党は年内決着を目指すべく、党内調整のための意見集約を加速させ、消費増税を含む「社会保障と税の一体改革の素案」を来週一週間で取りまとめようとしている。野田首相は推進派、慎重派、反対派が入り混じるなか、求心力維持へ譲れぬ一線として不退転の決意で臨むという。
素案はただ与野党協議のためのたたき台に過ぎず、消費増税は本来超党派で議論すべき事項だ。工程表を明確にし、何よりも行革優先・景気配慮を念頭に入れ、法案提出前には民意に問う必要がある。であるならば、消費増税の方向性は避けられないものだと感じている。
素案の付帯事項として、国会議員定数削減や公務員改革を含めた行政改革推進、景気動向で増税を凍結する弾力条項が盛り込まれている。ただ消費税の逆進性対策として今回は、「給付付き税額控除」を導入するも、「軽減税率」は見送っている。それぞれ問題はある。
「給付付き税額控除」導入には、社会保障と税の共通番号の整備が前提となる。納税者の所得や税額を正確に把握するシステムを構築することは難しい。不完全だと公平な給付ができず、ばらまきになりかねない。「軽減税率」では、軽減対象とする物品特定の線引きが難しく、管理も複雑になる。いずれ共通背番号制が必要だというのはわかっているが、システム整備には準備期間と多額の投資がかかる。私としては「給付付き税額控除」よりも、消費税導入前の物品税体系に近い「軽減税率」の方を優先すべきだと思っている。
世界貿易機関(WTO)の公式閣僚会議は17日夜(日本時間18日未明)、多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の全体合意を当面断念する議長総括を採択して閉幕する。2001年に始まった交渉は、先進国と新興国の対立などで進展が見込めないことが明白になった。WTOによる貿易自由化は今後期待できず、日本にとっては環太平洋経済連携協定(TPP)の重要性が一段と増す。 (日経新聞 H23.12.18)
自由貿易体制の権化とされていたWTOの実質上の敗北宣言と感じ取れる。ロシアの正式加盟が承認され、156ヵ国・地域、世界貿易の98%をカバーする状態にまできていたのだが、とても残念だ。今後は一部の国・地域で経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を結ぶ動きが加速することになりそうだ。日本としても今、TPPや日中韓FTA、欧州連合(EU)EPAの交渉を推し進めつつある。
このままでは、購買力が低く市場として魅力が乏しい、後発発展途上国(LDC)が取り残される状態となり、貿易を通じて世界全体を豊かにするというWTOの理念が頓挫してしまうことになる。また欧州危機を発端とした世界経済の悪化懸念の中、新興国の一部では保護主義の動きがみられる。そうした意味ではWTOの役割はまだ残されているはずだ。南北問題にしてはいけない。
「今後数カ月以内に、日本国債が危機に陥る可能性がある」。米有力ヘッジファンドのヘイマン・キャピタル・マネジメントが顧客に送った手紙が米市場で話題を呼んでいる。創業者のカイル・バス氏が日本国債を国内の投資家が買い支える構図に限界がきていると指摘。欧州債務危機の深まりとともに、巨額の財政赤字を抱える日本にも危機が迫っていると警告した。 (日経新聞 H23.12.2)
ギリシャ危機が言われて以来、日本は本当に大丈夫なのかと言われ続けてきた。債務残高のGDP比150%のギリシャが危機にあり、200%を優に超える日本が持ち応えられるわけがない、という声が多い。
日本側はこう反論する。国債の95%が国内消化で金融機関が保有している。経常収支が黒字傾向にあり豊富な外貨準備を保有している。潤沢な資産を保有しており実質的にはさほど悪化していない、と。
しかし、円高と大震災の影響もあり、2011年度末には1,000兆円を突破するとみられている。経済成長の鈍化から貿易収支が赤字に転じ国際収支が悪化し始めている。労働人口の減少で貯蓄率が低下傾向にある。国際価格の急落が始まれば金融機関が打撃を受けやすくなってきている。
欧州危機や米国のQE3懸念で円高傾向にあって、ドルベースでみてみると債務残高のピッチはさらに早く感じられる。それもあって警鐘を鳴らしているのではないか。
政府・民主党は7日、東日本大震災の復興財源に充てる復興債の最終償還期間を25年に延長することを決め、3党幹事長会談で自民党と公明党に提案した。自公両党は受け入れる方針で、8日に残る焦点のたばこ増税の扱いを協議する。償還期間は復興増税の柱である所得増税の期間とほぼ同じになる。復興債問題が決着したことで今年度第三次補正予算案に続き、増税関連法案も修正したうえで月内成立が確実となった。 (日経新聞 H23.11.8)
復興債というのは、東日本大震災後の6月に成立した復興基本法に発行を盛り込んだ国債の一種で、目的を復興資金の調達に限定されている。5年間の復興経費19兆円のうち、11.5兆円を復興債によるものとし、その償還財源を臨時増税などで賄おうとしている。
今回の決定見通しにより、所得税額を一定割合上乗せする「定率増税」は2013年1月から2037年末まで続くことになり、事実上の恒久増税化しているといえる。
毎年の税負担は当初政府案10年に比べ、4割程度に軽減できるという。納税者の毎年の痛税感は和らぐかもしれないが、全体の増税額は変わらない。ただ、三党合意によりこの決定が方針となるのは確実だ。受け入れるしかないようだ。であるなら、いち早く震災復興策を実行に移してほしい。
次に政府は消費税率引上げに向けた準備法案を国会に提出するつもりのようだ。このことは今月3日のG20サミットで国際公約している。国民には受難が続きそうだ。
海外経済の減速を背景に、輸出が年末にかけて足踏みする可能性が高まってきた。東日本大震災からの生産復旧をテコに、7~9月の輸出数量の伸びは7%増と急回復した。
だがアジア向けでは、すでに電子部品や鉄鋼などを中心に停滞している。けん引役の自動車輸出にも減速懸念が浮上してきた。円高による輸出競争力の低下も追い打ちとなり、国内景気の足かせとなりそうだ。 (日経新聞 H23.10.25)
4~6月期のマイナスから7~9月期のプラスへとV字回復を示していた。ただ今回の欧州発の金融危機の影響で世界経済が減速し始めている。そのことでアジアから欧米への電機などの最終製品の輸出が伸び悩み、その影響が日本発の部材輸出に及んでいる、と指摘されている。
さらにタイの洪水被害も新たな影響を及ぼしている。日本企業がタイを第三国向け輸出の拠点と位置付けて、相次いで生産体制を増強してきた。このままでは、円高長期化の影響と相まって、10~12月期はマイナスに落ち込むのではないかと危惧されている。政府の円高阻止対策とタイ洪水被害支援策が待たれるところだ。
野田首相は17日、首相官邸で内閣記者会のインタビューに応じ、環太平洋経済連携協定(TPP)について「日本は貿易立国であるべきだ。アジア太平洋地域は成長のエンジンになるので、高いレベルの経済連携は日本にとってプラスだ」と述べ、交渉参加への強い意欲を表明した。同時に「なるべく早い時期に結論を出す」と語った。 (日経新聞 H23.10.18)
米韓FTAが来月1月にも発行する見通しとなっている。日韓の輸出産業は自動車や電機など競合分野が多く、このままでは日本企業が一段と厳しい競争条件にさらされ、世界の貿易自由化の流れに大きく取り残されてしまう。韓国はEUともFTAを発効しており、予備交渉の段階に留まっている日本はその面でも遅れを取っている。
経済界が国益を考えての早期の交渉参加を求めているのに対し、農業団体は国内農業が大打撃を受けるとして参加に強硬に反対している。与野党内でも意見は大きく割れている。慎重姿勢を保ち続けて参加タイミングを逸し、不利な条件のもとで参加せざるを得ない状況となってしまうことが一番危惧されるところだ。対外に活路を見出さざるを得ない日本にとってはルール作りから参加する必要がある。反対派に対しては、競争力や生産基盤を強める支援策を明確に打ち出すことで説得していくしかない。規制・制度改革により既得権益の構造に風穴が開くことを恐れている。ただ、これはTPP参加以前の問題であり、このことを進めることも日本経済の再生につながるものだ。
政府としては、プロジェクトを立ち上げて交渉参加問題の調整を本格的に始め、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに結論を出すべく協議を進めているようだ。交渉への参加決断は待ったなしのところに来ている。
日本経済は東日本大震災後の停滞を脱し、回復の途上にある。だが、ギリシャの債務危機を背景に金融市場が動揺。米欧景気の減速など世界経済の変調が新たな不安として浮上している。円高の長期化も企業収益の重荷になる。復興需要の本格化が内需を支えるが、しぼむ外需との綱引きで景気は回復力を試される。 (日経新聞 H23.10.3)
日銀が3日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感が半年ぶりにプラスとなり、大震災による供給制約がほぼ解消し、生産や輸出が持ち直してきたことを示している。「売りたいのにつくれない」という状況は終わった。
しかし、ギリシャ危機がグローバルな金融不安に波及し、3年前のリーマン・ショック後のような信用収縮につながるリスクが浮上してきている。そのことが世界各国の実体経済に影を落としている。欧州債務問題や米国の景気減速懸念の高まりのみならず、中国やインド、ブラジルなど新興国によるインフレ抑制のための金融引き締めで、世界経済の先行き不透明感が急速に広がってきている。さらに過去最高の円高水準が続くことを懸念しており、先行きは慎重な見方を強めている。「つくれるのに売れない」恐れが出てきたためだ。
となると、復興需要による内需拡大が期待されるわけだが、政府の復興計画の足取りは重く、世界経済の減速懸念と相まって足を引っ張る要因となりかねない。政府には復興計画の具現化推進と超円高対策が早急に望まれる。
日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)が4~9月、前年同期比2.2倍の約3兆円に膨らんだ。グローバル企業だけでなく内需型や中堅企業まで買い手が多様化しており、「M&Aブーム」の様相となりつつある。日本は欧州不安の余波が軽微で買収資金の調達環境はなお良好。円高も買収には追い風となり、収益環境が不透明感を増す中でも企業は新興国などへの成長投資に打って出る構えを崩していない。 (日経新聞 H23.9.30)
超円高で四苦八苦している日本だが、この現象は円高メリットの一つだと言えよう。今やブームの様相となりつつあるという。背景には、失われた20年と言われるほどの景気の長期低迷や、人口減少による人口構造の変化など日本経済の閉塞感がある。新興国など海外成長を取り込む必要性に駆られて、むしろ危機感からM&Aに乗り出している。
手元資金が豊富であること、海外企業の株価下落で買収資金が抑えられていること、欧州債務危機の影響を受けている海外金融機関に比べ国内銀行の資金提供意欲が強いこと、そして超円高であることが、その盛り上がりを後押ししているようだ。
しかし過去には、日本文化の特異性も相まって、海外企業の管理を巡っては上手くいかないケースも多かったらしく、高値づかみということもあったようだ。ブームというだけで稚拙な判断で行なうと痛い目にあいかねない。過去のケースを分析し慎重な判断でM&Aに乗り出す必要がある。ただ、今後の日本にとって海外に販路を見出すことは必要不可欠なことだ。
日本の中堅・中小製造業が東南アジアへの進出を加速する。今後3年間に、自動車部品、機械部品など約350社が商社が造成する工業団地に進出する見通し。円高を背景に海外シフトを進める自動車、電機大手が部品や素材の現地調達率を高めているため、中堅・中小は存続をかけて海外移転に踏み切る。製造業の土台である中堅・中小の国際競争力は高まるが、国内雇用の減少など空洞化も懸念される。 (日経新聞 H23.9.18)
円高及び高水準の法人実効税率が企業の国際競争力をそぐ一因となっている。それを受け大手では早くから海外進出を行なっており、また現地調達率を高めているという観点から、中堅中小も存続をかけて海外進出に踏み切るということだ。特に自動車・電機・機械業界及びその関連業界に海外シフトが顕著にみられるという。
中堅中小の海外進出を支援しているのが大手商社で、電力・道路・水処理等のインフラを整備した工業団地を造成しているのだ。特に東南アジアでは自国の産業集積を高める好機と捉え、高度な特殊技術力を持つ日本企業の呼び込みに力を入れている。その仲介を担っているのが商社というわけだ。
ここで問題となるのが産業の空洞化であり、国内雇用の減少及び技術力の分散などが懸念される。旺盛となる新興国の需要を取り込むためには、現地生産せざるを得なくなるのか。日本としても見逃すことはできない。雇用創出のためにも、特区制度を取り入れて企業の集積化を計ったり、海外企業を呼び込んだり、新しい産業に力点を置いたりするなどしていく必要がある。せざるを得ない、ということから脱却する政策が望まれる。
政府は東日本大震災からの復興費用を賄う臨時増税について、これまで5~10年と見込んでいた増税期間を15~20年超に延ばすことを検討する。毎年の税負担を軽くし、景気への影響を和らげる狙い。政府税制調査会で所得税と法人税の定率増税を軸に複数の案を検討する。与野党協議を経て月内に最終案をまとめることを目指す。 (日経新聞 H23.9.7)
与野党に根強い増税慎重派や、景気に配慮して期間延長の検討に入ったというが、これは「朝三暮四」ではないか。単なる数字の加減乗除を行なっている議論に過ぎない。期間延長は恒久化を生むことになりはしないか懸念されるからで、危惧は拭い切れない。
そもそも復興増税12.5兆円が3党合意で想定されているが、復興基本方針が決まっているだけで、街づくりの復興デッサンは出来上がっているのだろうか。関連自治体は政府の方針が決定されない中、復興事業を保留しているところもあるとか。
今こそ特区構想を推し進め、民間の力をもっと活用すべきではないか。規制緩和及び税優遇を進めれば、民間は資金を投入する。使えるものは使う。公は使いやすくさせればよい。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日午前、日本国債の格付けを最上位から3番目の「Aa2」から、中国と同じ4番目の「Aa3」(ダブルAマイナスに相当)へ1段階引き下げたと発表した。「経済成長見通しの弱さが、赤字削減目標の達成と、社会保障と税の一体改革の実施を困難にしている」と指摘。財政改革の実行力に疑問を呈した。 (日経新聞 H23.8.24)
ムーディーズにより9年ぶりに日本国債が1段階格下げされた。ただ今年の1月にS&Pにより1段階格下げされており、またムーディーズも5月にその方向性を発表していた。恐らく今回の民主党代表選の動きを見ていて、最大の懸念である財政再建が遠のくのではないかと感じとり、議論を促す必要性があることを認識させるために行なったのではないかと思う。
米国債の時も同様であったが、民間の格付け会社の動向に一喜一憂するのはいかがなものかとも思う。しかし、「大震災と電力不足による経済成長の鈍化」、「社会保障と税制改革の取り組み不足による財政悪化」を指摘しており、このこと自体は真っ当なものだ。
日本の評価が中国と同等なものになったことをどう感じとるかだ。このことを踏まえて、次期政権には財政健全化に向けた議論を活発化させ、一矢を報いてほしい。
19日のニューヨーク外国為替市場で円相場は一時1ドル=75円95銭まで急伸し、3月17日に付けた過去最高値(76円25銭)を更新した。
世界景気の減速懸念を背景に日米欧で連鎖的に株安が進み、リスクを避けようとする大量の投資資金が円に流れ込んだ。米金融緩和の長期化観測に伴う日米金利差の縮小も円買いにつながった。日本経済は東日本大震災からの復興の途上にあり、大幅な円高は景気に悪影響を与える恐れがある。 (日経新聞 H23.8.20)
このような危機に対しては本来、財政政策と金融政策とを抱き合わせで行なうべきだが、今の日本の財政状況では財政政策は取り辛くなっている。そこで金融政策に絞って考える。
まず、政府と日銀による通貨の発行を行なう。日銀は日銀券を刷り、政府は政府通貨を刷る。そのことにより通貨発行益を得、財政収入とする。また通貨発行によりインフレ率が上がり、実質金利が下がる。これを利用するのが良いのではないか。
この財源をドルないしユーロ買いの介入資金とし、得たドル・ユーロで米国債ないしユーロ各国の国債購入又は、SWF(政府ファンド)の資金とする。このことが米欧支援であることを認識させて協調介入を促がす。名目金利がゼロでも、インフレにより実質金利がマイナスになり、日米金利差も拡がっていく。このことにより円高を阻止しようというものだが、政府の果たす役割は大きい。ただ、今の政治空白は大きく国益を損ねており、早くしないと日本の製造業の空洞化が加速してしまう。円高のメリットはさほど目立つものではない。
東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日中韓印豪ニュージランドは13日、インドネシアのマナドで経済相会合を開いた。日中両政府の共同提案に基づき、アジア大洋州にまたがる「東アジア広域自由貿易圏」実現に向け交渉を加速することで合意した。2012年中をめどに首脳レベルによる本交渉入りを目指す。 (日経新聞 H23.8.14)
米国債格下げをきっかけに、世界の各市場は大きく動揺している。新興国のインフレ懸念や金融引き締めによる景気減速懸念に加え、欧米の債務問題の余波で投資家がリスクに一段と神経質になり、株式、通貨が大きく下振れしている。市場が委縮してきている。
また、昨年から米国主導で交渉が本格化した環太平洋経済連携協定(TPP)の影響も大きい。TPPにつては、中国の参加は今のところ想定されていないし、日本も参加を先延ばししている。ASEAN各国は参加の是非をめぐり分断している。閉塞状態になってきている。
この2点から、日中ASEANが広域自由貿易圏の実現を急ぐ方針を固めたようだ。中国主導を警戒する日本が印豪ニュージランドを巻き込んだ形だ。そのことにより世界人口の過半を占める大自由貿易圏が形成されたことになる。日本が選択する道は大きな市場を相手に生き抜いていくことにあると思う。
日立製作所と三菱重工業は将来の経営統合を視野に、社会インフラなど主力事業の統合に向けた協議を始める。2013年春に折半出資で新会社を設立し、社会インフラのほか環境、エネルギー、IT(情報技術)の計4分野を中心に事業を統合する方針。近く統合準備委員会を設立する。経営統合が実現すれば、日本の産業構造を大きく変える巨大再編につながる。 (日経新聞 H23.8.4)
日本の製造業が円高と政治愚策で苦境に立たされている。その上、一業種に多くの企業が存在し海外勢に対する競争力をそいできている面も一部みられる。その中でこのような発表がなされ再編統合が実現されれば、日本の産業構造を大きく変え、再び主導権を取り戻すことになりそうだ。
戦後の日本経済の急成長は「日本株式会社」として政官財一体となって実現されてきた。再び巨大資本の生き残り策として、欧米大手や新興国メーカーへの対抗力を高め、日本の産業力向上のために企業の巨大再編につなげていく。これも一策である。
新興国を中心として社会インフラ整備及び個人消費が今後加速していくことは確実であり、こうした巨大市場へ攻勢をかけていくためにも、自動車・電機・化学・医薬といった産業にまで再編の波を拡げていく必要があると思う。そのキッカケを今回は与えたと思う。
政府は2日、農業再生に向けた中間報告をまとめた。農地を20~30haに集約する方針を前面に打ち出し、農業法人の加工・流通業への進出を支援するファンドの設立も盛り込んだ。
農業の競争力強化を強く意識した内容で、貿易自由化による成長戦略実現の布石とできるかがカギとなる。 (日経新聞 H23.8.3)
現在の平均農地面積は約2haで、その10倍にもあたる。高齢化と跡継ぎ問題とからんで、耕作されないまま放置されている農地は40万haに達しているという。これらを法人化して農地を集約し、意欲のある「担い手農家」に貸し出す制度の導入を検討している。
このことは今後の貿易自由化の進展をにらみ、国内農業強化策として重要な方向性を示していると思う。被震災地域を中心にまず「特区」を設け、重点的に進めていくのが良いのではないか。強い農業が強い日本を生む。
円高が止まらない。27日の外国為替市場では一時、1ドル=77円57銭と、日米欧7カ国(G7)が円売り協調介入を実施した3月18日以降の高値を5営業日連続で更新した。
2008年秋のリーマン・ショック後、欧米などが通貨安にカジを切ったのをきっかけに円高が進展。足元でも、米国や欧州の債務危機を背景にスイスフランや金と並ぶ資金の逃避先として、円高が再加速している。 (日経新聞 H23.7.28)
リーマン危機後の欧米の大幅な金融緩和が、比較的傷が浅かった日本円に資金流入を呼び込み、円独歩高の状況を生み出した。また、ギリシャなど南欧諸国の財政危機がユーロ不安に飛び火し、近隣のスイスへの資金移行を広めた。この日本とスイスに逃避資金の流れが加速しているのだ。両国とも経常収支黒字国で、その通貨である日本円とスイスフランが買われやすくなっている。震災復興とデフレ克服を抱える日本、金融危機が直撃したスイス、両国ともに通貨高は悩ましいところだ。
特に、米国における債務問題が上院・下院ねじれ状態にある中、打開策が見出せず頓挫している。米国債格下げとか債務不履行(デフォルト)とか言われ始め、このことが国際金融市場を動揺させている。日本の債務問題も同様な動きだし、金融市場の動揺が与える影響は大だ。通貨高で破産した国は無いというが、本当のところはどうなのだろうか。
政府は東日本大震災からの復旧・復興費用を賄うため、10兆円規模の臨時増税を実施する方向で検討に入った。増税期間は5~10年とし、所得税や法人税を軸に税額を上乗せする。子ども手当の見直しなど歳出削減に加え、国有財産の売却や剰余金で増税額をできるだけ抑える。
月内にもまとめる復興基本方針に盛り込み、2011年度第3次補正予算案と同時に法案化を目指すが、増税の開始時期は不透明だ。 (日経新聞 H23.7.20)
東日本大震災の復旧・復興費は20兆円超と推計されており、歳出見直しによる削減、資産売却・特別会計剰余金などの税外収入、そして残りの10兆円規模を臨時増税で手当てするとしている。
増税期間は「復興債(国債)」の償還期間に合わせ5~10年とし、当初の2~3年は税負担を重くして段階的に縮小する方針ということで、定率増税(一定期間税額を一定割合で増やす)を軸に検討しているようだ。
マニフェストなどの既存歳出の削減、復興方針・対策の明確化、税負担の公平性を念頭に入れて今後も議論を進めていってほしい。与野党の醜い争いだけは見たくない。
国際通貨基金(IMF)のマムード・プラダン対日代表団長は、日本経済新聞とのインタビューで「日本は景気回復期にあると期待される2012年に、消費税を7%に引き上げるべきだ」と述べた。日本の歳出削減の余地は限られていると指摘したうえで、財政再建に向けて「何もしなければ公的債務は持続不能な道を進むことになる」と警告した。 (日経新聞 H23.7.20)
とうとうIMFがしびれを切らして、日本の財政問題に対して警告を発してきた。欧州ではギリシャ問題がEU問題にまで派生してきたことへの危惧からくるものだと思う。財政再建は欧米等先進国にとって最大の課題となっており、このことが景気回復の遅れをもたらしている。
日本国の借金総額は約900兆円、GDPの2倍もの水準になっており、アメリカの100%、ギリシャの150%に比べはるかに状況は悪い。ただ、95%が国内消化、経常収支が黒字傾向、潤沢な資産、この3点で日本は「まだ大丈夫だ」と思われていた。
しかし、2008年のリーマンショック以降、この3点に亀裂が見え始めており、「そろそろ危ない」という状況に陥りつつあり、このことがすべての歯車を狂い始めさせている。財政再建、外部から言われなくても、税論議とともに早急に進めていかなければならない。
13日朝の外国為替市場で円相場は急伸し、一時1ドル=78円48銭をつけた。東日本大震災発生後の3月17日に76円25銭をつけて以来、約4ヶ月ぶりの高水準。
米格付け会社がアイルランド国債を「投機的水準」に格下げしたことで、欧州の財政不安が一段と拡大。ユーロ売り・円買いにつられる形で、対ドルでも円が買われた。対ユーロでは一時1ユーロ=109円台後半をつけた。 (日経新聞 H23.7.13)
昨年浮上したギリシャの債務危機が問題となって以来、欧州の財政不安が常につきまとっている。アイルランドと同様にポルトガルも「投機的水準」に格下げされている。さらにその余波がPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)のイタリアやスペインにも及んでおり、欧州の財政不安が一段と拡大し重大な局面を迎えている。
さらにアメリカが6月FOMCで追加的な金融緩和策を検討する必要性が議論されたことが判明し、量的緩和第3弾(QE3)が意識され、円高に拍車をかけている。
日本経済の回復のカギとなる輸出企業にとって円高は足かせとなっており、業績悪化を懸念する声が高まっている。政府にはマーケットを注視(視ているだけではダメ)し、過度な円高阻止のために為替介入も辞さないという動きだけでも示してほしい。
政府・与党は30日、消費税増税の方針を示した社会保障と税の一体改革案を決定した。消費税率は「2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げ」、引き上げにあたっては「経済状況の好転を条件」など景気に配慮することや「予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みにする」との弾力条項を盛り込んだ。名目成長率を指標にすることでデフレ脱却との両立も求めた。 (日経新聞 H23.7.1)
「消費税10%」は共通認識として捉えられているようで、今後のたたき台ともなっている。今の財政状況を考えれば将来の消費税増税も避けられないだろう。国民の多くもその事を理解している。
ただ、この論議を行なうにあたっては、国会議員の本気度を見せて欲しい。身を削る、つまり議員定数の大幅な削減を含めた選挙制度改革を並行して議論すべきだ。衆参議院のあり方、選挙区割り、投票形態などの抜本的な大改革が必要だ。肝に銘じてほしい。